静岡県知事 川勝平太 様
陳情書
 私達は岳南食肉事業協同組合です。富士市にある岳南食肉センターでと畜、解体業務を行っています。先般富士市から、『平成26年3月をもって岳南食肉センターを閉鎖する』と、口頭ではありますが、通告がありました。その理由としては、(1)“静岡県東部市長会での「県の主導の下で県東部に一屠場の整備を」とのお願いに県から何も回答もない”(2)“富士市には生産者も少ないので、これ以上と畜場運営の負担をしていくのは不合理である”とのことでした。閉鎖となれば、事業協同組合の組合員や組合従業員は廃業・失業の危機に迫られます。そのような死活問題と直結した決定には、とても同意できるものではありません。また私達だけではなく、当センターの利用者・関係者にとりましても深刻な問題となっています。
 富士市側の言い分としては、(1)“老朽化”(2)“税金による負担”(3)“近隣の反対”が閉鎖に至る三大理由として挙げられています。しかし、もし岳南食肉センターが閉鎖されたら、現在当センターでと畜解体している家畜はどこで処理すればいいのでしょうか?近隣である、小笠食肉センター、山梨県の石和のセンター、神奈川県の厚木食肉センターの三ヶ所へ振り分けて処理することは、上物はもちろんのこと、老廃牛・豚大貫物等の受入れ問題もあり、困難だと思います。静岡県で生産された家畜が、山梨・神奈川にある他県のセンターで処理してもらうようなことは、県としても不本意なことではないでしょうか?
 我々人間は動植物の命を食することによって自らの命を繋いでいます。人間にとって「食」ということは何にも増して重要なことであり、自分たちが食べるものは自分たちが生産することが生きていく基本です。私達はその責任の一端を担い、「安心安全な食肉」を生産することにより、市や県、延いては国に貢献するという気概で岳南食肉センター事業に専念してきました。静岡県に生きる人間として、これからもこの仕事を続けていきたいのです。
 岳南食肉センターは県東部地域の畜産・農業を発展させ、今以上に充実化していくためには必要欠くべからざる施設であり、将来起きるであろう食糧危機に対しても、また地域全体の発展のためにも貢献できると思っています。
 鈴木尚富士市長は、『食肉センターの必要性は認めるが、一市、二市で負担するものではなく、もっと広域で負担すべき施設である』との認識ですので、ぜひとも県の主導の下で、富士山麓・愛鷹山麓・函南・伊豆の畜産地域を擁する東部に一屠場の整備をお願いします。
 以上、現在我々の直面しているこのような窮状をご賢察のうえ、県東部に一屠場の整備が実現するまでは岳南食肉センターを存続できますよう早急に善処していただきたく、ここに陳情いたします。

平成25年3月  日         
岳南食肉事業協同組合       
理事長 神尾 正和